2018/07/15

少し難民の話(ドイツ旅日記:番外編⓬)

バイエルンからの帰り道のアウトバーンで、Kandelという町の横を通り抜けた。

2017年12月27日、Kandelというpfalz州にある人口約9000人弱の難民受け入れに寛容な小さな町で、
15歳のドイツ人の少女が、元交際相手のアフガニスタン難民の少年(家族のいない)に刺殺される事件が起きた。
少年は15歳だと言っているが、難民で一人でやって来たため、公式な書類やパスポートなど一切存在しなく、18歳以上(未成年以上)の可能性も非常に高いため、少年法が適応されるか否かなどで、今年の6月からその裁判が始まったそうだ。

その事件直後から、この小さな町ではデモの中心地となった。

彼女の死を悼むためのものが、いくつかの極右団体(例えば新ナチのNPDや極右過激Reichsbürgerbewegung等の支持者も含む)が参入してきて、今度はそのカウンターデモの左翼団体がぶつかり合う、政治的主義主張のための道具として使われるようになったという。
週末のデモの呼びかけに、数千人(多い時に約4500人)にも及ぶ極右から極左までの団体、警察官が殺到し、声高に主張を繰り返し(あるいは人種差別的なことを叫ぶ団体も…)、静かで穏やかだった中世の雰囲気を残す通りは剣呑としていたらしい。
毎回暴徒とまではいかなかったが、数人の軽負傷者は出ているし、ネオナチとみられる人たちがヒトラー時代の敬礼(ドイツでは禁止されている)をしたとして逮捕されている。

いくつかの右翼団体のスローガン(団体名?)が
Kandel ist überall.(Kandel is everywhere.):「カンデル(このような惨劇)は、どこにでもある(起こりうる)。」
逆にカウンターデモ団体のスローガンが
Wir sind Kandel.(We are Kandel.):「(ここでデモをしている彼らはすべて見知らぬ人で、)我々がカンデルである。」
(意訳ですが)

この事件に関連する難民問題について、1月の記事ですがの日本語のサイトがあったので、もしよかったらどうぞ。

この事件をみて思ったのだが、
これとまったく同じような事件が日本(日本人同士)で、去年起きなかっただろうか…
16歳の元交際相手が、少女と同級生の少年を殺傷している。
この事件は、日本では未成年の起こした怖い事件だというだけで済んでいるのは、日本人同士だったからであって、これがもし日本人以外であったとき、又は、それが難民や移民であった時、その反応はどうだったのだろうかと、空恐ろしくなる。
排他的なところがある日本で、もし『それ』が起きた時、”民心の揺れ”は群れでどう動くのか
戦後教育に力を入れ、検証や議論をしっかりしてきたドイツでさえこれである、
なんだかドイツよりも、よほど怖いことが起きそうな気がする。
格好つけて『ダイバーシティ』などと口だけで言っていられなくなる未来がすぐ近くに来ていると思う。偉そうな口元から出る言い慣れていないカタカナに、不安しか残らない。

(ヨーロッパで起きたテロを見ていると、たまに日本国内で起きている事件と酷似している時がある…しかもテロより先に起きているから、もしかしてテロの見本になっているのかな。。。と思う時があるのだけど)


話は変わるが、
今回のドイツ旅行で出会たアンゲリカもアネリーゼも、ドイツへ来た難民の支援を積極的にしている。
興味があったので、クラウスの車に乗せてもらった時に、アネリーゼにそのことを聞いてみた。(とはいえ、私の無いに等しい語学力による聞き取りなので、そこは大目に見てください)

近くの難民シェルターには、コンゴ・南スーダンなどのアフリカや、アフガニスタン・シリアなどの中東からの避難民の家族で逃げてきた人が多いらしい。
アネリーゼは元教師なので、そのスキルを活かして今は小さい子供たちに語学を含めて色々教えるボランティアをしているそう。

結局、避難民であっても、内戦状態が何年も続いているので故郷に帰れる日などいつ来るかわからない、一時的な避難ではなく、新しい国で生活の基盤を作らなければならないことになる。
一番ネックになるのが、言語と仕事。
親たちは、専門学校や職業訓練校へ通い、スキルを覚えて(国によっては教育を受けていない場合もあるので)、仕事に付きやすくする。
そうするとシェルターからも出れて、家族で住める家も借りれるようになる。
(シェルターは、あまり環境がよくないといっていた。)
実際についている仕事は、例えばベイカー、調理師、縫製業、土木工事などのガテン系だそう。
やはりEU各国の国単位でもそうだが、
難民排斥と容認の人が、必ず小さな町にも存在する。
もちろん、彼女たちが住んでいる地域での受け入れ反対する人はいるそうだ。


日本にいるとなかなか気づけないかもしれないが、
ヨーロッパは未だにアフリカや中東などからの難民の受け入れに紛糾している。
つまりは、難民にならざるを得ない事態が多くの地域で未だ起こっているということである。
2015年から積極的に難民を受け入れているドイツでは、昨年の9月の総選挙で4期目の続投となったメルケル首相が国内の難民問題で、今、窮地に立たされている。
そういった背景からも注目されていた先月(6月)の28日29日に行われたEUサミットであったが、難民対策の議題は、”何か”が決まったような決まらないような…といった感じでやっとこさ意見がまとまった様だ。

難民に関するドイツ内政とメルケルとEUサミットについて、ご興味あれば日本語の記事があったので↓
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56441

ちなみに上の記事に出てくる、ゼーホーファー内相はCSU(バイエルン州地方の保守政党)党首とあるが、バイエルン人の気質は保守的で独立心が強い傾向があるそうです。(個人談)


これは、EUだけの問題ではなく、今にどこの国でも起こりうる事だと思う。
現に、ロヒンギャはアジアで直面している大きな難民問題の一つである。

性別も、信仰も、人種も、障害も、価値観も、多様化する未来に取り残されないように、と。

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