2022/03/12

おぞましい豚 “nauseating, fearful pig”

 これは、2022年3月12日に書いていたものです。※状況が変わりやすいので…

連日のニュースは、心痛めることばかりである。
最初の数日間は、寝ている間(時差−7時間)にどうなったろうと寝起き(猫アラームによる午前4時前後起床)と共にネットニュースのトピックに目を通し、いつも付けないテレビをつけながら朝の支度をし、夜のニュースとその他にも手が空くとついついネットニュースを見てしまっていた。

だが、テレビとネットの凄惨なニュースを見ていると憤りとか悲しみとかしか浮かんでこなく、感情の起伏で目に入ってくることしか追えなくなっていくのが怖くもなり、最近は早朝と夜のトピックチェックのみにした。

今起きていることを追うことよりも、「なんで今こうなったのか」を追うことの方が自分に向いていると思う。
いろんな人がいろんなことを言ったり書いたりしているし、感情を煽るような映像ばかりで、その背景や歴史、地政学などほとんど耳に入らず、呆然と戦火の映像だけが心をえぐっていく。シリアの時と同じである。

その中で、とても勉強になったのが、日本記者クラブでの会見である。
廣瀬陽子さん、小泉悠さん、角茂樹さんの三者が登壇されていたが、廣瀬さん、小泉さんの話はいろんな媒体で追っていたので、新しい情報というよりも自分にはまとめやおさらいみたいな感じで聞けたが、元駐ウクライナ大使の角茂樹さんの話は、前の二人の話を補うような解説もされていて、腑に落ちた部分がかなりあった。
歴史などはかいつまんで知っていたが、ここに至るまでの双方の歴史観、とくにヤヌコーヴィチ、ポロシェンコ、ゼレンスキーの対ロシアとEU化の変遷のあらましから、なぜこのタイミングの開戦だったのか、プーチンの主張するナチ化もアゾフ大隊を示す人が多いが、角さんの説の方がしっくりくるものだった。

また1990年初頭に口約束で結んだと主張される「NATOの管轄権もしくは軍事的プレゼンスは1インチたりとも東方に拡大しない。 」の有無について、ドイツのニュースを伝えてくれる沢辺さんのpodcastによる話がとても参考になった。
もし、あのタイミングでNATOを解体し、ロシアを含めた新しい体制を作っていたのなら、今とは全く違った世界になっていただろうと思う。

そして、ドイツがあの地域へ自国の武器を送ることへの抵抗感は歴史的にも相当な決断だと思うし、ポーランドもまた隣国の状況は過去の姿と重なって他人事とは思えないと思う。

第二次世界大戦ブームで数年前に色々調べていたので、ウクライナ危機の中プーチンがドネツクとルガンスクの独立を宣言した時に、1938年のナチスのズデーテン併合がデジャビュして、戦争が始まる気しかしなかったが、本当にその数日後に開戦した時は、ヨーロッパが再び戦火になることへの衝撃はかなり大きかった。
2020年の幕開け前後から始まったSF小説のような全世界でのウイルスパニックによる鎖国や20年目にしての米軍アフガン撤退からのカブール陥落、そして侵略戦争…科学技術が発展したまま、思想と時代が100年戻ってしまった気がする。

このニュースが報道されるようになって、私のタイムラインからかき消されてしまったのが、シリアやイラク、アフガニスタンの情勢と難民のことである。
そして、ミャンマーや、カザフ(ここはもう情報が消された気もするけど…)や、元々そんなに日本に情報が入ってこなかったアフリカ系の難民など…

ウクライナ危機の直前までアフガニスタンの難民については情報はかなりあったのに、今は探すのが大変なくらいである。ポーランドやベラルーシの国境へ必死の思いでやってきたにもかかわらず、ベラルーシによる嫌がらせの駒として不法入国の難民なために断固拒否され追い返された(プッシュバックされていた)アラブ系の彼らに、今のスラブ系難民はどう映っているのだろうか…と、涙ながらに国境入りするウクライナの人たちの姿に心痛めながらも、複雑な思いもした。

EUは、難民を受け入れる緊急保護策を速やかに合意させた。
これはウクライナ難民であればEU内での受け入れ無制限で、就労や補償などある。
イスラム難民に不寛容だったポーランドの隣国の難民への献身的な保護は素晴らしく、そして以前は断固拒否のハンガリーですら、受け入れに容認したという。
これはすごい決断だと思う反面、とても複雑になる。

日本だったら、どうなんだろうか…例えば、宗教、人種、肌の色、目の色、言葉、国籍、地域…どこで優劣をつけてしまうのか。

このような状況で助けられるところから助けていくしかないのだろうが、何か心に引っかかるものがあり、考え込んでしまった。

本当にどうでもいいが、タイトルの“おぞましい豚”は、今回のことで唯一笑ってしまったことである。
音声でニュースを聞いていて、この部分に、「え、今なんて言った??」とググってしまったくらいである。