20代後半あたりまで、近現代の戦争描写のある本や映画やテレビ、資料館などを徹底的に避けてきた。
小さい頃に子供会で見させられた、戦争の悲惨さを伝えるアニメ映画がトラウマになり、夜も寝れなくなったのが原因だったので、とりわけ映像が怖くて見れなかった。
なので、かなり有名なものも含め、今回が初見になる。恐れ多くも★評価してみた…というか、映画の良し悪しよりも単に自分の好みの評価。
※数が多いので、”㉑参考資料の感想 (映画編)Auschwitz-Birkenau編14~その2”に続きます。
『戦場のピアニスト』(2002年/フランス・ポーランド)★★★
ユダヤ系ポーランド人の名ピアニストであるウワディスワフ・シュピルマンの戦時下の体験記を元に描いている。
ワルシャワへ行く前に観ておけば良かったと思った。ゲットー、2つの蜂起、壊滅したワルシャワ、そしてショパン。
この映画は、本当に素晴らしかった。感情移入をさせないよう、坦々と映す戦時下のワルシャワは、むごく虚しくてやるせなく、そして悲しいまでに無力に見えた。
ドイツ人将校役のトーマス・クレッチマンが、役的にもかなりイケメンでした。
ワルシャワ歴史地区について→ ④壊された街、壊せなかった想い (2018/6月) ゲットーについて→ ⑤ワルシャワ・ゲットー (2018/6月)
『ソハの地下水道』(2011年/ポーランド・ドイツ)★★★
ナチス占領下のポーランドで、下水道業者のソハがユダヤ人を地下水道に匿った実話を映画化。
本当に見ていて辛くなるが、とても良い映画。
“戦場のピアニスト”でも、”地下水道”でも感じたが、生い立ちで戦争に深く関わったことのある監督(たまたま全員ポーランド出身だが)の描く戦争は、どこかに肩入れするでもなく、共感や感動をさせるわけでもなく、坦々と情景を描き、立場に関係なく生身の人間を描いている。
涙を誘う描き方や英雄を作り出すのは、戦争を知識として知った人で、体験した人はただ坦々と醜さを表すだけに思うが反戦映画となるのは、やはり後者だと思う。
As if we need GOD to punish each other.(劇中エピローグより)
『ヒトラーの贋札』(2007年/ドイツ・オーストリア)★★
強制収容所内で行われていたナチスによる偽札作り”ベルンハルト作戦(国家機関によるものだと史上最大)”の実話を基にした作品。色んな意味での”内と外”の見せ方や対比が印象的。オープニングとエンディングで流れるカルロス・ガルデルの”mano a mano”(演奏Hugo Diaz)は、”五分と五分”という意味だと誰かの感想で書いてあった。音と音楽の使い方が秀逸。
内容に関係ないが、ブルガー役のアウグスト・ディールがとても美しい(骨格)。
『帰ってきたヒトラー』(2015年/ドイツ)★★★
1945年のヒトラーが、自殺の瞬間から現代のベルリンにタイムリープするという荒唐無稽のコメディー映画。が、かなりの社会派映画。大筋は社会風刺的でコメディータッチだが、スタジオ以外の街頭市民、ネオナチ、NPD(ドイツの極右政党)との撮影は基本アポ無しらしくて、難民問題による二極化や景気低迷、政治不信のドイツ国内の様子を如実に映し出すことで、警鐘を鳴らしていた。とても面白かったが、視聴後、考え込む。
『黄色い星の子供たち』(2010年/フランス)★
ナチス占領下のフランスで行われた(仏政府も協力した)ユダヤ人の一斉検挙(ヴェル・ディヴ事件)を題材にした映画。
子供たちが可愛い…ので、尚更悲しい。。。
ジャン・レノは、客寄せパンダ的な効果を狙ったのかな…肥えているし彼である必要はないと思うけど、この手の映画に観る人が増えるためなら良いのかもしれない。
『サラの鍵』(2010年/フランス)★
これも、”黄色い星の子供たち”と同じくヴェル・ディヴ事件を取り扱ったもの。
現代のジャーナリストの視点から過去を掘り起こしていく。
こちらの方が、好きかな。
職場で記事について会議中に、
“(戦時中に)こんな(悲惨な)ことがパリの真ん中で起きていたなんて吐き気がするわ。”と言った女性の同僚に、
”じゃあ、あなたがもしその場にいたら何をしたと思う?”と問いかける主人公。
別の同僚が、”たぶんテレビで見ているだけだね、イラク戦争の時みたいに。”と答えていた。
いつだって傍観者で居続けてしまう、自分の身に降りかからない限りは。
『ハンナ・アーレント』(2012年/ドイツ・ルクセンブルク・フランス) ★
“⑱人を残忍にするシステム(2018/6月) Auschwitz-Birkenau編11”で触れた映画。“全体主義の起源”を書いたユダヤ系社会学者ハンナ・アーレントが、”イェルサレムのアイヒマン”を発表するまでの話。
ドキュメンタリー編で紹介した”Defamation”を見てからだと、70年前から何も変わってないんだと思った。
『二つの冠/Dwie Korony』(2017年/ポーランド)
マキシミリアノ・コルベ神父(⑬コルベ神父(2018/6月) Auschwitz-Birkenau編6参照)の生涯を描いたドキュメンタリードラマ。二つの冠とは、コルベ神父が幼少の頃、お祈りしていると聖母が赤と白の冠を持って現れ、どちらを受け入れるかと尋ねられる。コルベ神父は「両方欲しい」と答えたという。白は純潔を保ち、赤は殉教者となることを意味している。内容に関しては、”汚れなき聖母の騎士会”の創立100年を記念して公開されたのを考慮のこと。
『ブラジルから来た少年』(1978年/アメリカ)
メンゲレなどを知らない時に、ラジオドラマを聴いたことがあった。ナチスにオカルト的な話題が絶えないのは、カルト教団的な政治理念や残虐さの他に、ヒムラーのオカルト傾倒と、マッドサイエンティストと言われるこのDr.メンゲレの存在がかなりあるだろうと思う。個人的にラジオドラマの方が好きだった。
『ライフ イズ ビューティフル 』(1997年/イタリア)★
愛に守られた息子ジョズエを通して見る、両親の出会い、戦争に向かう世の中、収容所、そして終戦。戦争映画というよりは、愛と人生賛歌の映画。喜劇として悲哀を描いている分、カメラで映していないその先や意味を知っているとより悲しい。女性士官の態度や戦前に懇意にしていた軍医の平素と変わらぬやりとりなどの違和感も映している。
『手紙は憶えている』(2015年/カナダ・ドイツ)★★★
老人ホームに暮らす90歳になったアウシュヴィッツサバイバーの人生最後の復讐劇。戦争体験者が高齢になり、認知症や介護、老衰など、現実にあり得る話。お爺ちゃんによるロードムービーっぽいサスペンスで、とても面白かった。主演はサウンドオブミュージックのトラップ大佐の約50年後、枯れ演技も素晴らしい。
『HITLER the rise of evil』(2003年/アメリカ・カナダ)★
2部作で、ヒトラーの生い立ち〜長いナイフの夜までを描いている。
ヒトラー役を、10代から好きな英国俳優ロバート・カーライルが演じているのだが、良い意味で不気味で気持ち悪い。しかし、全編で英語を喋っているのが、気になる。
『ソフィーの選択』(1982年/アメリカ)★
非常にヨーロッパ映画っぽく、全体的に叙情的で神秘的、そして重い…
メリル・ストリープ初主演
今も美しいが、この時は物凄い美しさ。
広い寝台を/畏れをもって準備し/公正な/審判の下る日を/静かに待とう/しとねをまっすぐに/まくらは丸く/朝日の黄金色のざわめきに/乱されぬように(劇中、エミリー・ディキンソンの詩より)
『わが教え子、ヒトラー』(2007年/ドイツ)
敗戦間近のベルリンで最後の演説をするヒトラーの指南役にユダヤ人の役者が抜擢される話。コメディーだが、これは合わなかった。
『ワルキューレ』(2008年/アメリカ)
実際にあった一部の軍部によるクーデター・ヒトラー暗殺事件(ワルキューレ作戦)をトム・クルーズ主演で映画化…。ヒトラー暗殺については、ドキュメンタリーも見て、そちらの方がスリリングさが半端なく、面白かった。私の中で、ご本人はトムクルーズよりずっと魅力的なイメージなんだが…
『命をつなぐバイオリン』(2013年/ドイツ)★
戦争の足音が大きくなりつつあるウクライナで仲良くなるドイツ人の女の子とユダヤ系ウクライナ人のバイオリンとピアノの才能がある男の子と女の子が、戦争により翻弄されていく。バイオリンの神童の少年役を演じたのは、現実でも神童のバイオリニストだということで演奏シーンは、本物だそう。
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