2012/12/25

白と青と赤

旅行から帰ってから、割と直ぐの
展示の打ち合わせをしていた時に、

話が一段落してから
そういえば…といって、
とてもよかったと勧められた映画があった

『アレクセイと泉』



知っている人も多いと思うけど

私は、その時に、はじめて聞いて、

別の人に、本も、とても良いよ、と言われて
本があることも知った

写真絵本みたいになっている

写真家の本橋さんが、本の写真はもちろんだが、
ドキュメンタリーの映画の方の監督もされている

××××××

ベラルーシの小さな村の話
55人の老いた村人と、1人の若者の話
そして、その村に住む、人、動物、植物にとって生命の源になる大切な泉の話

世界のほとんどの人が、名前を知ることもなく、
静かに温かく堅実に一日を送り、土地に森に優しく感謝して、人生を過ごしていた人たちが、
ある日のある時点から、世界のほとんどの人が知ることになった土地の話

なかなか、映画のレンタルもないようだから、
もし、持っている方がいたら、かしていただきたい

お声がけください、おねがいします

××××××

もう、10年以上前に新聞の新刊書評で見つけて、チェックしていた本があった

米原万里著の『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』


その割とすぐ後に、図書館で見つけて借りたのだが、
何故か読まずに、期限がきて、かえしてしまった

それから、5年後、米原さんが、若くして亡くなられた
まだ50代じゃなかったかな

その時も思い出して、また、図書館で借りたが、何故かまた読まずに返してしまった

で、今回、違う本を探していたら、たまたま目に入ったので、再度借りた

3度目の正直で
今回はちゃんと読んだ

××××××

10年越しの期待を裏切らず、とても面白かった
なぜ早く読まなかったのだろう

私の学校教育は、古代中世史は、よくやったのだが、近現代史は急ぎ足だった気がする
それに、面白さも、古代中世史から比べると、あまり感じなかった

華々しい革命や争いも、近代兵器の登場で殺戮が量産化され、感情の波もなく、淡々と惨さや卑劣さの記述も詳細化して

人間の中にある剥き出しの残忍さの記録の様で、
自分の中にも、それがあるのかと思うと、怖くて知りたくなかった

だからか、恥ずかしいことに、あまり、知識がない

実際、この本を読みながら、なんとなくあの頃ニュースの映像をチラチラ思いだすだけで、
鮮明な記憶としては、なかった

なので、それが私の生まれてからの話であることに、余計、衝撃を受けることが多かったし
頭では、知識では、わかっていたことだけれども、
自分が何不自由なく生活してきたその横で、自分ではどうすることもできない外的な大きな何かにより生死の境にいるのが、
自分となんらかわらない等身大の人たちであることに、何とも言えない気持ちになった


そして、この本には出てくるユーゴスラビアは、現在ではもうない

××××××

小さい時に流れていたニュースで、今でも思い出すのは

灰色の空をバックに、高揚した多くの若者が冬着のいでたちで、
落書きされつくした壁の上に立ち、旗を掲げ、雄叫びをあげ
そしてある者は、その壁を金づちで叩き砕こうとしている映像

そして、夜空にピンクや緑の発光したミサイルが飛び交う映像

それを、夕飯食べながら、ぼんやり見ていた

日本は平和だった
だけど、私が産まれてからも、世界は激動しつづけていた

昨日もシリアでは、空爆で、数多くの犠牲が出ている

××××××

だいたい抽象的な人類の一員なんて、この世にひとりも存在しないのよ。誰もが、地球上の具体的な場所で、具体的な時間に、何らかの民族に属する親たちから生まれ、具体的な文化や気候条件のもとで、何らかの言語を母語として育つ。どの人にも、まるで大海の一滴の水のように、母なる文化と言語が息づいている。母国の歴史が背後霊のように絡みついている。それから完全に自由になることは不可能よ。そんな人、紙っぺらみたいにぺらぺらで面白くもない

(本文より抜粋)

××××××

すごく暗い話でも、世界を嘆く話でもないです
そして、小説ではなくて、ノンフィクションです
「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本のことを言うんだろうと思う

面白いというと、語弊があるのかもしれない
でも、息継ぎせずに一気に読める感じがする

この本も、やはり読んでもらいたいです

本当に、早く亡くなられたことが残念でならない


0 件のコメント: