この人知ってるぅ〜?
と、聞かれた時に、池田学をはじめて知ったのが数年前
有名になれるかなれないかは、
結局、運と努力なのかもしれない
もちろん才能はありきの話だけど
世の中、絵が上手い人なんて腐るほどいるんだよな…
メディアに沢山取り上げられたからなのか、平日の昼なのに人がたくさんいた
佐賀県立美術館の方のポスターですが… こっちの方が好きなので |
暇なのは、じいさんばあさんと私くらいなものだから、年齢層が高めで
みな、ほぇ〜とか、細かいね〜、よくみえんよ、これは何かね…とかつぶやきながら見ていた
じいさんばあさんが好むようなアートじゃないと思うが、
この世代を動かすのはテレビと新聞なので、きっと大きく取り上げたのだろう
都内の美術館での展示ではない事を気の毒に思ったが、
アートに関心がない大衆層にも垣根を広げるには、百貨店の方がいいのかもしれないと、客層を見ながら思う
池田さんも言っていたが、
今のご時世、ネットで探せば、作品は見れるし、
特に平面作品の場合は、それで満足されてしまう場合がある
下手すると細密画だと、画質さえ良ければ、簡単にマクロにもミクロにもできるので逆に見やすかったりする
でも、サイズ感を掴めないのが二次元の難点で、
そのサイズ感がたぶん一番重要だったりする(アートに関わらず)
Rebirth, 2016. Pen & ink, 13 x 10′ (300 x 100cm). Courtesy the Chazen Museum of Art. photo from http://www.thisiscolossal.com/2016/11/rebirth-manabu-ikeda/ |
漫画家が使う丸ペンの一番細いものを使っているらしいです Manabu Ikeda at work, still from Clayton Adams. photo from http://www.thisiscolossal.com/2016/11/rebirth-manabu-ikeda/ |
そのプロセスに自分も組み込まれて、会場内を回る
こんな人いきれの中で決められた手順で作品を見るのは、
気分も削がれるし、好きなように見なきゃ作品に失礼だと思うが、
日本だと仕方ないんだよな…と、作品の箸休めとして、眼前に迫るおじさんの頭皮を見つめる
あぁ、バベルの時もそうだったな、と白髪に繋がる毛穴を見つめながら思い出す
あの時など、怒り出す老人がいて、警備員がなだめていた…
そういえば、バベル展(東京都美術館)の感想は書いてなかったから、ここにまとめて書いてしまおう
池田さんの作品は、
たしかにすごかった
本当に時間がかかる仕事だし、
細部と全体(ミクロとマクロの視点で)の構成のバランスがとても綺麗だった
そして、すごく丁寧
あの作品サイズで、あの細かさを1㎝四方の中でさえ、手を抜いていない真面目な仕事をしている感じがした
つい職業病で腱鞘炎を心配してしまう
細密であれだけ大きいと、人はその仕事量に有無を言わさずに圧倒されてしまうんだろうな
とにかく細密画では信じがたい大きさである
↑
この動画は、 Chazen Museum of Art(ウィソコンシン大学の美術館になるのかな)でのArtist-in-residence program時の制作風景(1枚の絵に3年3か月掛けて制作)で、工程がすごく分かりやすい動画
http://www.thisiscolossal.com/2016/11/rebirth-manabu-ikeda/
↑英語のarticleだけど、上の写真も動画もここから拝借した。
とても分かりやすくて良いです。
でももしかしたら、大きな作品をみるより
東京動物園協会の季刊誌の挿絵の動物の写実をみる方が純粋な画力みたいなのがよくわかるのかも
Canis latrans,2008,Pen & ink,19.3 x 16.2 cm |
マクロとミクロの目を持ているのが、ものすごい才能なんだろうな
予兆,2008,Pen & ink,190×340㎝ photo from saga prefectural museum
|
また、どこかの機会に、ゆっくり鑑賞できたらいいな
たしか今回なかったけど、船の絵も見たいし
でも混んでいると、周りの会話が聞こえて面白かったりもする
池田さんの作品は、細密画によくある遊び(ウォーリーを探せとか安野さんの旅の絵本みたいな楽しみ方やトリックアート的な楽しみ方)があるので、
あぁ!こんなところに〇〇がいる!これはよく見たら一つ一つが〇〇なのね!みて、あそこは〇〇をしている!とかアートに興味なくても万人が楽しめる仕組みになっている
安野光雄『旅の絵本Ⅶ』(中国編)より |
池田さんの気持ちは知らないけど、
私もこの言葉を本当によく言われるが、現実は全く楽しくない…
彼はどうだろうか…
途中、後ろに背の低いばあちゃんがいた、彼女は、見えなかったり、何かわからなかったりすると、私に尋ねてくるので、簡単に説明したりしていた
あと、おしゃべりな3人のマダムの会話もおもしろかった
"この人、芸大なのね。"
"さすがねぇ。"
"そーいえば、芸大卒の半数以上が、消息不明になるんだってよ。"
"すごいわよね〜"
という会話をしていた …
え?そうなの?芸大卒の知り合い、割といるけど、私の芸大以外の知人よりよほどしっかりしているが、これはまさか、missingしていない半数以下の貴重な人たちなのかな…
池田さんの興亡史シリーズのところで、小さな作品を見ながら(S0号より小さかった気がする…)
"4,5年前にこの作品を銀座の○○画廊で3万円で売ってたら、たっけぇなァ~て思うだろうなぁ"と、後ろのおじさんが大きな声で呟くのを聞いて、複雑な気分になりながら進むと
眼前に"興亡史"の城の大作が見えて、バベルを思い出した
興亡史,Pen & ink,200×200cm photo from saga prefectural museum 池田さんの作品は写真に作品サイズを書いているので、注意してみてください 例えばこれなら"2m×2m"ですからね!! |
視力だけが取り柄の私でさえ裸眼で追えない…
しかも、油彩であり、筆で描いているという脅威
The Tower of Babel (Pieter Bruegel the Elder, 1570) |
理由は、まだ見たことのない2枚のヒエロニムス・ボスの作品が初来日だったからなのだけど
25点のみが、世界に現存するボスの絵だと言われているが、昔から好きな作家なので、10代から機会があれば海外の美術館に行くたびに探した
ので、たぶん、すでに10枚くらいは実物をみていると思う(真作らしい"のも含む…)
今回来ていた2枚の内の一つ『放浪者』 たしか、この絵は、数枚の組絵作品だったはず(だからこれは丸い形)だけど、今はバラバラになっていたはず Hieronymus Bosch: The Wayfarer, circa 1500–1510 |
エッチング(銅版画)作品もいくつかあった、
モノトーンな細密画とエッチングの相性の良さは言うまでもないが、
逆に、相性が良すぎて素人目には違いがわからないと思う
エッチングの作品 ピーテル・ブリューゲル1世(下絵) / ピーテル・ファン・デル・ヘイデン(版刻) 「大きな魚は小さな魚を食う」 1557年 Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam, the Netherlands |
池田さんも、エッチングを数点出していた
やはり、相性がよく
同じ手間をかけるなら、エッチングにして枚数を増やした方がよほどお金になるだろうな…と素人は思ってしまう
池田さんのインタビューで聞かれていたが、
宮崎駿に似ていると言われているらしい
(彼自身は影響を受けたアーティストはいないと言っていた)
それをいうなら、大友克洋にもでしょ(大友さんは、バベルで内部を描いていたな)
宮崎駿『風の谷のナウシカ』(原作漫画)より |
大友克洋『AKIRA』より、一部分 |
大友克洋による、バベル内部 大友さんの手描き内部をデジタル技術で融合したらしい |
特に、ファンタジーやSFをテーマに描いていると如実に辿ってしまう
だから、そういうものたちの寄せ集めの池田さんの作品やモチーフに既視感を覚えるのは、仕方のないことで(そもそも、たぶんモチーフの選択が自然物と既製物や人工物だし)
余程、草間さんのようなご病気か、ドラッグを使えば突拍子も無いものがうまれるかもしれないが、LSDや瞑想でsatori "してまで描くよう不健康さや狂気は池田さんからは、全く感じない
あと、もちろんアニメーションや漫画だけでなく、それまでの自分が目にしたアート、デザイン、物語、映画、自然物…全ての影響下に我々の思考は存在する
現代において、センス=知識量だと言われているから、知識と経験が多ければ、センスはおのずと身につくのかもしれない
情報に溢れ、なんでもネットで調べられるこの時代だからこそ、
(老衰した私の脳細胞に深く刻み込ませるためにも)本物を見ることの大切さがあるとは思う
Jean Henri Gaston Giraud |
Jean Henri Gaston Giraud 超有名なフランス人漫画家 |
人間にとって何も明かされてない時代
たとえばロウソクの光が届く範囲しか見えず暗闇や悪魔が存在した時代とか
科学的解明がなされず錬金術や天体の研究で、魔法や精霊がいた時代とか、
そうゆう不明瞭や不可思議が溢れていた時代の人たちの作品、
たとえばボスやブリューゲルの時代の作品は、見たことのないものが存在していて、今でも私をドキドキさせる
ボスの絵から生まれたフィギュア figurines by Netherlands-based Parastone |
それを考えると、すごく悲しかった
ただ、それに近いものを体感できるとしたら、まだ、文学と旅の中には、あると思うのだけど…
それは、私の願望なのかな…
話は変わるが、 たしかtumblrで見つけて、画像保存していたが link先がわからなくなって、これ誰が描いたか知りたいのだけど ご存知の方いますか? なんかこの人、見たことあるんだよな… 私に似ているとか、そういうことではないと思うけど… |
1 件のコメント:
松本太洋
コメントを投稿