空は終日晴れ渡り何処までも原色に近い青だった
人を馬鹿にしているみたいにポカンといつも晴天だった
まるで終戦迎えたその日から腑抜けたじぃちゃん見ているみたいで
縁側出てはうたた寝るじぃちゃんと背負った空が寂しかった
焼けた匂いが残る土地を僕らは無邪気に遊んでいた
疎開先での延長のようにケタケタ笑って過ごしていた
あの頃大人たちの前には何もなかったかもしれないが
僕らは常に明日があった
明日は何よりも力強く僕らの前に立ちはだかり
僕らはそいつを必死こいて本気で登り今日を迎えた
街では白い兵隊に化粧の濃い女が猫なで声を出し
紅い口から吐き出される胸クソ悪い言葉たち
擦り寄る姿が母に見えて具合が悪くて走り逃げた
焼けた土は足に絡まり色んなカスを蹴り飛ばす
きちがいみたいに走った先はいつも決まって森だった
森は年上の女のように戸惑う僕らをたしなめて
優しく僕らを迎えいれる
蝉の声がやたらと耳にへばりつく暑い夏のことだったが
森に入ると静まりかえり流れた汗も木々が吸い取る
大きな戦争の爪痕はいたるところに残っていたが
僕らと森と空だけは何も知らないと阿呆になりすまし
遊び呆けていたかもしれない
正気になるにはこの国はあまりに光が乏しかったが
あの頃見上げた空の色は
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