2020/07/01

㉑参考資料の感想 (映画編)Auschwitz-Birkenau編14~その2

『フォース ダウン』(2008年/オランダ)★★★

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オランダの児童文学”戦争の冬”を映画化。大戦末期、ナチス占領下のオランダに住む少年の一冬の出来事。雪の景色も綺麗で、ストーリーも面白く、とても良い映画だった。日本の宣伝文句と写真がひどすぎて、本当に勿体ない映画。

地下水道』(1956年/ポーランド)★★

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ワルシャワ蜂起での、劣勢のパルチザンによる対ドイツゲリラ戦を描いている。
もう…凄まじい…その一言に尽きる。
パルチザンや反政府ゲリラなど、レジスタンスの末路が常に悲惨であるとわかっていても、出口のない暗闇に、わずかな光を求めて足を踏み入れて、光を見失い恐怖し発狂しながらも、戻ることもできずに泥沼を進むしかない、それこそ舞台となる地下水道のよう。
それでもレジスタンスを選ばざるを得ない状況(戦争)が、かぎりなく悲しい。近年のシリアしかり…
下のも同映画のポスター、まさにこんな感じ…それにしてもかっこいいデザイン。
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『カティンの森』(2007年/ポーランド)★★

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歴史の闇に長い間隠蔽され続けた第二次世界大戦下に実際に起きたカティンの森事件を映画化。
監督のアンジェイ・ワイダ(“地下水道”と同じ監督)の父親もこの事件で亡くなったそう…
やはりこれも坦々と惨さが描かれている。列強に囲まれているポーランド史の悲惨さは、筆舌に尽くしがたいが、特に第二次世界大戦勃発からポーランド共和国になるまでが悲惨である。
無惨な映像はたくさんあったのだが、
クリスマスイヴの夜、捕虜収容所内で、捕虜となり希望を失いかけていく将兵たちに大将が演説する場面はとても心に残っている。
薄暗く狭い収容所の中で、たくさんの部下に囲まれ真ん中で演説する、それをゆっくりと俯瞰しながら撮影し、またゆっくりとカメラは降りていく美しい映像なのだが、その中で
“…もう一言。徴兵されて運命を共にしたものに言いたい。君たちの大半だ。学者、教師、技師、弁護士そして画家。生き延びてくれ。君たちなしで自由な祖国はありえない。我々は欧州地図上にポーランドを取り戻す。君たちはそのポーランドを再建する。…(劇中より演説を一部抜粋)”
そして、生き延び家族との再会を誓い、皆で祖国の唄を歌う。

『善き人』(2008年/イギリス・ドイツ)★ 

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ユダヤ人の親友を持つドイツ人の文学部の大学教員が、ナチス政権や時代に流されていく姿。
ごく普通の”善良なる市民”が、主義主張もなくただ時代に流されていく滑稽さや警鐘を描いていたのかな。

『囚われのサーカス』(2008年/ドイツ・イスラエル)★

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イスラエル作家の小説原作。イスラエルの砂漠の中にある、心も体も壊れてしまったホロコーストサバイバーたちのサナトリウムでの話。戦争が終わって、瓦礫と生き残った人がいて、壊れたものを少しずつ(建て)直していけば、数年経てば元に戻るのだというのは、幻想でしかないのだろう。『ソフィーの選択』しかり『プリーモ・レーヴィ 』しかり、戦争の中に取り残された人たちは、いつ終戦を迎えられるのだろうか…。

『肯定と否定』(2016年/イギリス・アメリカ)★★ 

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⓮歴史修正主義(余談) Auschwitz-Birkenau編7の中で取り上げた映画。
私は戦後生まれで、知れば知るほど信じがたくなることばかりだが、それでもホロコーストやガス室の存在を頑なに信じている。一方、ホロコーストやガス室は無かったと信じている人がいる。こんな明らかなことでさえ揺らぎかねないのなら、では、真実とは一体何であり、また、何を信じれば良いのかと、茫然とする。

『アイヒマンを追え!』(2015年/ドイツ)★

『検事フリッツ・バウアー』(2016年/ドイツ)

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フランクフルト・アウシュヴィッツ裁判に尽力した西ドイツのユダヤ人検事(戦中は亡命)のドラマ。敗戦したら、全員が改心して、信奉していた思想がすぐに180度変わる訳がない。それに、ナチ狂信者や、戦犯を逃れた者が、年齢的に戦後の社会や政治の中に入ってくるの至極当然のことで、そうなると特にドイツは社会や組織の中枢にすら反ナチの仮面をして潜んでいる可能性が高い。戦後で平和のはずが、迫害されていた人たちは、どれほど恐ろしかっただろう…そして、東西問題(シュタージなど)も同時進行していたし…。
ドイツ文学『朗読者(愛を読むひと)』の作中の裁判もこの頃である。

『ヒトラー 最期の12日間』(2004年/ドイツ・イタリア)★

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ブルーノ・ガンツの迫真の総統が話題になった映画。今もコラ動画(コラージュ動画)でよく使われていたりする。ヒトラーについてドキュメンタリーをいくつか見ていたので史実に基づくのだが、ヒステリーを起こしたヒトラーがどうもコミカルに見えてしまう。怪物やプロパガンダとしてのヒトラーではなく、人としてのヒトラーを描いている。最期の12日間だけなので、カリスマ性や狂信的魅力は全く伝わらず、映画しか知らないと、盲信者の滑稽さと違和感が異様。

『ヒトラーへの285枚の葉書』(2016年/ドイツ・イギリス・フランス)★

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実話を元にしたドイツの有名な小説原作。役者がとても良い。静かに淡々と悲しみと不条理と戦慄が灰色の空気の中で過ぎていく。監視された狂信的体制の中での、普通の人の静かなささやかなだが勇気ある抵抗。一粒の砂という表現がよい。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/ドイツ)★

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1939年11月、ミュンヘン一揆記念演説での時限爆弾によるヒトラー暗殺未遂事件の犯人ゲオルク・エルザーの話。英雄視されるワルキューレ作戦(『ワルキューレ』の感想)の首謀者クラウス・フォン・シュタウフェンベルクとは全く違い、花も名誉もない片田舎に住む36歳の平凡な家具職人のゲオルク。そして、戦後もその意思や行動を英雄視されることもなく、時代に埋没していた男の話。変わりゆく社会風潮、悪くなる世界情勢、きな臭い空気、盲信者の出現…自分の周囲の出来事についていけず、慄き、それをなんとか止めるために自分がすべきこととは…取り憑かれたように計画を立て単独で実行した彼は、自由を愛し、ごく当たり前の生活を望む平凡な一市民であった。

『シャトーブリアンからの手紙』(2011年年/ドイツ・フランス)

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ナチス占領下のフランス・ナントでレジスタンスによりナチス将校が1人暗殺され、その犯人のあぶり出しと見せしめの報復のため、市民や政治犯収容所で大量に処刑された、その中には少年たちもいたという実話(『パリ日記』)を元に映画化。ドイツ軍人で作家思想家のエルンスト・ユンガー役は、『ヒトラー 最期の12日間』でゲッペルスを演じたウルリッヒ・マテス。

※ポーランド旅行記バックナンバーまとめ※随時更新①~

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