2015/10/25

漆についての自論(笑)

仕事の資料作りをしていたら、
大学院時代の理論講義の授業のレポートデータが出てきた

今思うと、あの時が一番、文章を書くことにノリノリで
周りは、A4用紙1枚のレポートを書くのに、ヒーヒー言っていたが
その中で、私はむしろ書きすぎてしまい、1枚に収めるのが大変だった

というか、大学の授業で一番好きだったのが、実技よりもレポート書きだった気がする・・・

で、今読み返すと、結構面白くて
やっぱり、描き方がノリノリだなと思う
というか、今、この文章書けないな・・・

しかし、読み直すと、これって授業の内容よりも完全にエッセイ風になっている(何様だ?)笑


ちなみにこの講義は、毎授業ごとにその日の講義内容(毎回先生が変わるオムニバス形式の90分授業だったかな)に関してのレポートを書くというものだった

そして、この回は、漆の小林先生によるスライドとかを使った漆の素材と表現の講義だった気がする

のに、ものすごいピンポイントで主観のみでしか書いていない 笑

この調子で、完全に授業内容というよりは独壇場のエッセイ風レポートを毎回書いていたが、文字数がきっちりあるので、最終的な総合評価は一番良い成績だった気がする、むしろ実技の授業の成績の方が良くなかった
言っておくが、美大だからこのレポートで許されていたが、普通の大学だったら落第していたことでしょう

もし、興味があれば、ご笑納ください (※小林先生の名誉のために言っておくが、まったく授業内容と違うことを書いています。すべては私の主観なので・・・・あしからず)



芸術文化原論 第五回(9 June 2004

                         2004-01-039(工芸) 福地 綾子

リストカットシンドローム(自傷行為症候群)というのが現代の精神病の一つにあるのだが、自分の腕をカッターやかみそりで切りつけて傷つけることで自己の存在証明や存在価値を見出そうとする症状のことを言う。一度、リストカットを何度もされた腕というのを見たことがあったのだが、白いやわらかそうな肌に突如異様な何本もの横傷が入っているのだ・・・何度となく傷つけられていたため腕は皮膚という媒体を無視し厚く腫れ上がり、傷はつけられた直後なのか濡れ濡れとしていて、シクシクとうごめく人面腫のようにさえ見えた。さすがに直視するには生々しく見るに耐えなくて目をそらしてしまったのだが…。リストカットは摂食障害と同じように未婚の1020代の女の子に多いとされている病気であり、基本的に自殺は目的にはしていないのである、ただ傷をつける行為を繰り返すのだ。

なぜリストカットの話を始めたかというと、実は前から思っていたのだが私には漆掻きされた漆の木肌がどうしてもリストカットされた腕に見えてしょうがないのだ・・・ほっそり白い漆の木は線の細い女の子の腕を思わせる。漆の木肌は人肌のように柔らかいというではないか、そして何本も入った横傷は痛々しくも艶めかしく、放っておけない危うさまである。スライドで映し出された漆掻きの様子を見ながら生唾を飲み込んだのは私だけではないはずである。漆は一度に採りすぎたり傷をたくさん入れたりすると弱ってしまうので、木が死なないように木を見ていたわりながら、長く採取できるようにするという。まるで漆の木が漆掻き職人によって存在を証明されているようにさえ見えてしまう。つけられた傷を治そうと次々と滴り出てくる乳白色のトロリとした樹液は、まるで憎悪の具現化のようで滴る樹液を掬い取るその行為は神がかり的要素を含んでいるようにさえ思える。ただれたように皮膚をかぶれさせるウルシオールの毒素は憎しみが乗り移って悪さをしているからで、職人はそれを掻き取り怒りを収めているのではないかとまで感じる。何千年も前から人々の生活に取り入れてきた漆はかぶれるにも関わらず、今なお使われ続けているのは、塗料や接着の材料として優れているからというだけでなく、きっと漆掻きという作業自体に宗教的な要素を見出していたからではないかと思う。静かに狂っていく漆の木が憎しみに焼き尽くされないようにと、内側に宿る憎悪を職人が掻き出してやる…そうやって採られた漆は毒素を放出しながら漆塗りの職人に導かれ固められるのだ。湿度による乾燥というのが漆の固め方であるが、矛盾した言い回しのようで特殊なことに思える、細菌類と同じ湿度・温度を好むのもまるで生き物のようである。

漆器が濡れ濡れと艶めかしいのは職人によって収められた怒りが艶を際立たせるからか、乾燥しているのにしっとりとして今にも水分が零れ出そうにみえるのは情念が塗り固められているからか…触ると妙にヒタリと肌に吸い付くのだ。

漆塗りのものは鄙びた家屋の床の間よりも遊郭の座敷の方が似合うと思う、ジメジメしている部屋の片隅で息を潜めて女の喘ぎ声を吸い取っては余計にしっとり艶を増すのではないか。そんな妖艶さがあるから怖くなる、見ていてゾロリと全身の毛が弥立つのだ。




塗る前に漆を漉している様子
(casaicoの彩子さんの写真から勝手に拝借。すみません)

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